カオスな異人種交流が生み出す新市場

とある夜の異人種交流会


これはもう、異業種交流会を超えて、異人種交流会だったのですよ!
先日一般社団法人3Dデータを活用する会・3D-GAN トップの忘年会に出席してきた。会場がアキハバラ、というのが大きなポイント。アキハバラならではの特異な人たちの集まりだった。
カブリモノしている右の写真は僕。会場にはこのモナーギコ猫?)の仮面を自作した方がいらっしゃっていて、ちょっとお借りして被らせてもらった。これが本当にスグレモノで、なんと前面にはCCDカメラ、内部には液晶ディスプレーが載っていて、被っていても前が見えるのだ!スゲー!(右の写真で、首のあたりから液晶画面の青い光が漏れているのが分かるでしょ?)

この忘年会、参加者がカオス。

  • ガチガチにお固い製造業CAD業界のオジサマ
  • CGモデラーのお兄さん
  • TVドラマのセット(崖とか)を作ってるお姉さん
  • 何故かコスプレしたメイドさん

スーツを来た固い業界のオジサンと、コスプレをしたメイドさんが同じ会場にいるってのは、ホント、異様な光景ですよ。異業種じゃない、これは異人種。

その彼らを結ぶものはただ一つ。
3Dデータだ。
3Dデータがなければ、彼らが出会う機会もなかった。そして、この3D-GAN(3次元形状を活用する会)というNPO法人(になったんですよね?)がなければ、彼らが出会う機会はなかった。

出会うはずがなかった彼らが、出会った。
きっと変化はここから始まる。

アキバという特異な市場

アキバって、「世界で一番キャラ立ちした街」なんじゃないか。
もっと突っ込むとアキバって、「3D市場がコンシューマ向けに成立しうる世界で唯一の街」かも。

Paul Graham の有名なエッセーで「都市と野心」というのがある。

・・・ミラノもほぼ同じ大きさであったにもかかわらず、事実上、15世紀の有名なイタリア人の画家は、みんなフィレンツェ出身だ。フィレンツェの人が遺伝学的に異なっていたわけではないので、レオナルドと同じくらいの天才がミラノにも生まれたと仮定する必要がある。その人には何が起きたのだろうか?

http://d.hatena.ne.jp/lionfan/20080531

アキバは、このフィレンツェになれるかもしれない。
だからこの「異人種交流」がアキバで始まった、というのはきっと大きな意味がある。

obj → STL 変換ソフトがない、という現実が示す断絶

この忘年会で、ひとつとても嬉しいことがあった。
ヒスイ、使ってます!」と声をかけて頂いたのだ。
ヒスイというのは僕が作っているフリーのCADフレームワークだ。obj ファイルから STL ファイルへの変換に、ヒスイを利用してくれているという。現在ヒスイのダウンロード数は 2,000 弱あるけれど、実際に使って頂いている方とお会いできたのはとても嬉しい。


それにしても、他に obj から STL に変換するソフトがない、というのは驚きだ。
obj形式というのは、正式にはwavefront objといって、CGモデラーさんが利用しているポリゴンデータのフォーマット。対してSTL形式というのは、Standard Triangulated Language の略で、主に製造業のCAD/CAMで使われてきたポリゴンフォーマット。
obj から STL に変換するなんて、技術的にはなーんにも難しくない。技術的な壁はなーんにもない。一体なんの壁がこの変換機能を阻んできたというのか。
文化だろーね。
CG系とものづくり系の文化的断絶は大きい。どちらもポリゴンデータで技術的な本質はなにも変わらないのに、両者は断絶している。これはとても不幸なことだ。
でも。
アキバの異人種交流会は、この文化的断絶をいとも簡単に乗り越えている。きっとここから、CG→ものづくり の流れが生まれる。これはとてもエキサイティングなことだ。

CGF - Consumer Generated Factory

この 3D-GAN の代表を務める相馬さんが、日経ビジネスオンラインの記事に掲載されていた。この記事に事例として、金津鬼(KANETSUKI)氏の話が登場する。実は「ヒスイ使ってます」と声をかけてくれたのはこの金津鬼さんだ。

以前は、CGデザインの孫請け外注みたいな仕事をされていた彼ですが、今では「リアル界」の「完成品」を企画・製造・販売するという身分になり、「毎日が充実しています」と顔に書いてありました。彼の設計室は自宅のPC、製造工場は冷蔵庫大の3Dプリンター1台、販売網はネットと行きつけのショップ、それで一連のバリューチェーンが完結した立派なメーカーとして成立しています。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20091216/211668/

この記事を読んで、CGFという造語が頭に浮かんだ。
一昔前、Web2.0って騒がれていた頃、CGMって言葉がよく出てきた。これは Consumer Generated Media の略。
この Media を Factory に置き換えれば CGF になる。Consumer Generated Factory。
単なる言葉遊びかな?そうかもしれない。でも、ひとつのコンセプトとして面白い方向性を示していると思うんだけど、どうかな。


ま、ともかく。興味を持たれた方、機会があればアキハバラでお会いしましょう。