むかーし、シャネルの戦略はこうだ、みたいなお話を聞いたことがある。シャネルは、シャネラーという言葉に象徴されるように、シャネル好きの女性は上から下までシャネルづくしになってもらおう、と狙っているそうだ。うん、なんかバブリーな雰囲気。むかーしむかしに聞いた話だからね。

つまりシャネルは、バッグ専門でも靴専門でもアクセサリー専門でもなく、ある特定の層の女性が身につけたいと思うものすべてを扱おうという方針だ。別の顧客層には浮気しない。ターゲットとなる顧客層を狙い撃ちして、その層が身につけたいものすべてがシャネルにはあります、とやるわけだ。

靴を作るという技術を幅広い層に展開するわけではない。アクセサリーを作る技術を展開するわけではない。技術の水平展開ではなく、顧客にフォーカスする。

別にシャネルが特別なわけでもなんでもない。例えば日本の商社は普通にこれをやっているように見える。客先に営業に出向いて、客が欲しがっている商品を取り揃えれば自然とそうなるだろう。こうしてお金の「入り口」を押さえることが出来る。販売チャネルというヤツだろう。

一方、僕みたいな小さなソフト屋はこういうことはできない。シャネル型が強いと分かっていたところで、技術で食っている零細企業や中小企業がこういう戦略を採ることはまず不可能なんじゃないか。とある顧客層向けにあらゆるソフトを作るなんて無理だ。いやソフトだけならまだしも、ハードウェアや流通なども含めてトータルにサービスを提供するなんて到底無理だ。そんな戦略は相当に大きな企業でなければ無理だ。小さな技術屋はちまちまと蓄積した技術資産を使い回しながら水平展開するしかない。

結局のところ、今まで受託ビジネスしかやって来なかった中小企業が突然パッケージビジネスやウェブサービスでお金の入り口を押さえようともがいたところで、そううまくはいかないだろうと思う。スタートアップなら博打も打てるかもしれないが、既存ビジネスからの方針転換というのは相当に難しいと思い始めた。

そんなわけで、
人月は悪どころか、ものすごい善かもしれない - レベルエンター山本大のブログ とか、
人月商売が悪だと思っている、イノセントなあなたへ - GoTheDistance とか、
そうなんだよねぇ・・・、と嘆息せざるを得ない。