もっと社長が目立つと面白いのに

ふと思ったのは、最近は社長が目立つ会社が元気だなーということ。いや、実際に財務諸表が元気なのかどうかは知らないけれども、とにかく社長が目立つと元気に見える。あるいは、目立つ社長を皆が礼賛するムードがある。そんな気がする。

やっぱり、今は社長自らがビジョンをもって突き進むことが望まれている時代なのかもしれないね。社長が目立たない限りなかなか機動力が発揮出来ない気がする。そういう機動力が、今は必要とされているのかなと思う。

えー、、これは特に結論のないグダグダなエントリです。つらつらと、思いつくままに。

僕が子供の頃の「社長」のイメージというのは、いわば天皇陛下と大差ないものだった。普段何の仕事をしているのかよく分からないが、なんだかその会社を象徴している存在で、どうして必要なのか分からないが社長同士でお食事したりお話したりゴルフしたりしている人、というイメージ。どういうわけだか海外からお高い絵画を買い漁っては自分の部屋に飾ってみたり、果てには美術館なんかを作っちゃう人、というイメージ。まあ、無知な子供の頃の印象だから立派な社長もたくさんいただろうけど、でも今思い返してもバブルだったんだねぇと思う。

僕が大学に入学したのが1995年。世間は Windows 95 で熱狂していた。僕は当時コンピュータはさっぱりだったからOSってのが何なのかも知らなかったのだけれど、何やらアメリカさんの社長は目立つなぁと思ったものだ。その後知れば知るほど、ビルゲイツは日本の社長のイメージとは違っていた。

そして今、ITの世界では「目立つ社長」がたくさんいる。代表はもちろんスティーブ・ジョブス。日本だと孫正義氏はとっても目立つ存在。社長のイメージも変わったなぁなんて思う。

以前、ビジョナリーカンパニーという本を読んだ。

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

この本には、「ビジョナリーカンパニーは時を告げるのではなく時計を作る」って書いてある。「時を告げる」というのはどういうことかっていうと、例えばイノベーションを起こすということ。すごーく単純化して言ってしまうと、ビジョナリーカンパニーは社長自らがイノベーションを牽引しなくてもいいんだよ、社長はそういうイノベーションを起こす装置(つまり「時計」)を作るのが仕事なんだよ、ということ。その装置こそが会社という組織なんだ、ということ。

その代表として3Mが挙げられていた。3Mの社長が誰かなんてだれも知らないけれど3Mは素晴らしい会社じゃないか。3Mの経営陣自身は直接イノベーションを起こさなかった。けれど彼らはイノベーションを起こし続ける組織を作り上げたのだ。つまり時計を作ったのだ。あれこそがビジョナリーカンパニーだ、というわけだ。

読んだ当時はなるほどと唸ったものだが、今思い返すとまた違った感想を持つ。ビジョナリーカンパニーの言説は、ヘタをすると現場を遠ざかってしまった経営陣にはとても耳障りが耳あたりが良いものに思えるということはないだろうか。我々は時の告げ方を忘れてしまってもいいのだ、時計を作れば良いのだから、と思うようにならないか。それがエスカレートすれば、時計を作らずとも時計職人を育てれば良いことになるし、職人を育てずとも職人が育つ社会を作れば良いことになる。結局何をしているのか分からない人になってしまう。

ビジョナリーカンパニーの副題は「時代を超える生存の原則」だ。だから時代を超えて生き延びてきた会社を研究した結果がまとまっているのだろうと思う。そういう視点では、「時計を作る」ことが確かに大事なんだろうと思う。逆に社長一人のカリスマ性に頼っている会社は、その社長が退いた途端に業績悪化の一途を辿る可能性が高い。

しかし、激動の時代にあって、今ココにある危機をサバイブするのに重要なことは「時計を作る」ことだろうか。時計が完成する前に会社が潰れてしまうこともあり得るのではないだろうか。

もっと踏み込むと、そもそも会社という組織が時代を超えて生存しなくちゃならない理由なんてあるのだろうか。・・・などとつらつら考えるけれど、よく分からない。


無責任に言わせてもらえば、いろんな会社の社長がもっと目立ってくれたほうが単純に見てる側としては「面白い」。社長が目立ったことをすればもちろん派手にコケる会社もあるだろうけれど、まことに無責任ながら、その方がこちらとしては面白い。「あの会社、社長が交代した途端にガラリと方針が変わったなー」ということがもっとあるほうが面白い。

どうも、日本でもこれから面白いことが起きそうだと予感させるものが少ない。その原因は、例えば日本のソフトウェア開発のアジャイル採用率が低いからとかじゃ無い気がする。そういうことじゃなくて、もうちょっと社長が目立ったら面白くなるんじゃないの、って思う。

まあ、それがなかなか難しいんだろうけど。目立つのって怖いし。それにこんな他力本願なこと書いてもしょうがないんだけど。そうはいっても頑張って目立っている方もたくさんいるし。

・・・すいません、ほんとグダグダで。ではでは。