新社会人に伝えたいことを一つだけ

それは、仕事は "sustainable" な "flow" だ、ということ。

これはさっきのエントリを書きながら思いついたんだけどね。時期が時期だけにこの手の話題が流行っているみたいなので、僕も流れに乗って書いてみることにした。

もちろん今から僕が書くことは、僕の経験の範疇の話であって、この世の中には本当に多種多様な仕事があるのだから、事情が異なる職種もきっとあるに違いない。だけれども、これは比較的多くの職種に当てはまることだろうと思っていて、しかも学生生活と社会人の間ではかなりギャップがあることだとも思うのだ。

学生時代までに要求された「頑張り」って、なんていうか、波があったな、と思う。何かある目標/目的となる大会とかテストとかがあって、そこに向けてガーッと頑張って頑張って、最後に成果を出してバンザーイ、みたいな。

でも、仕事はそうじゃない。ある程度は波があるけれど、でも仕事というものは、ある程度均質にずーっと続いていくものなのだ。

例えば、僕は大学生の頃は鳥人間コンテストに出場していたのだけれど、これは当然最後にコンテスト本番が控えているわけで、そこに向かってガーッと頑張って人力飛行機を作るわけで、大会が終われば結果はどうあれ「終わった終わったー」と反省会のビールを飲んで、後は夏休みに入るのだ。「頑張り」の成果が発露する機会は「大会」という時間軸上の一点に集約されていて、その一点に向かってひたむきに頑張ればよかったし、その姿勢は周囲の大人たちからも好意的に見られていたように思う。

NHKの番組でプロジェクトXというのがあったけれど、あの番組に関して功罪の罪の部分を語るとするならば、仕事というものをまるで何かの大会のように、ある一点に向かってひたむきに頑張って最後に成果を出してバンザーイというスタイルで表現してしまったことではないだろうか。もちろん、そのほうが番組としては絶対に面白いものになるし、やむを得ないことだけど。

でも僕が経験した仕事というのはそうじゃない。あるプロジェクトが始まって、そろそろ一区切り付きそうだという頃に、別のプロジェクトの話が持ち上がる。先のプロジェクトが無事納品を終えることには、もう別のプロジェクトが本格的にスタートしている。鳥人間コンテストの話に例えれば、毎月のように大会があると思えばいい。ある機体の最終テストフライトを行いながら、2つ目の機体の製作に携わり、しかも同時に3つ目の機体の構想に入る、という感じだ。

学生の頃は、人力飛行機の製作で徹夜も何度か経験した。そうやって頑張ることが素敵だと思っていたし、社会人になってもそうやって頑張って良いソフトウェアを開発したいと思っていた。

でも、現実は違った。

社会人の残業・徹夜は、学生のサークル活動の徹夜とは意味が違ったのだ。社会人の徹夜は、大会のような「ある一点」にむかってひたむきに頑張る徹夜ではないのだ。学生時代の徹夜は、最後の大会が終われば徹夜も終わりだった。すべてが終われば十分な骨休めの時間が取れることが約束されていた。しかし社会人の徹夜は違う。明日のリリースを何とか乗り越えても、次の仕事が待っている。

だから、学生のノリで頑張るとあっという間に潰れてしまう。それではダメだ。sustainableに、流れるように、一見淡々と見えるように、仕事をこなしていかなくてはならない。それが冒頭の sustainable flow の意味だ。出来るだけ緩急をつけず、仕事のアウトプットと勉強とを同時に並行して進めて、忙しさを上手くコントロールしながら生活できるようなコツを、身につけていって欲しいと思う。

これは僕自身への自戒も込めて。