慌てるな、ゆっくり急げ

先日は久しぶりに休日出勤というものをした。
背後に「締め切り」という名の怪物が迫りくる気配を感じている。思わず何度も振り返りそうになる。思わず、呼吸が乱れそうになる。思わず、慌てて走り出そうとしそうになる。
いや待て、慌てるな。ゆっくり急げ。
慌てたところで考える速度、思考の速度は速くならない。むしろ、思考というのは慌てれば慌てるほど集中力が乱れて、速度は低下してしまう。すなわち、慌てたところでプログラミングの速度が上がることはなく、むしろ効率は下がるばかりなのだ。
いつもより速くやろうとしても無理だ。それよりも、少しでもムダを排するしかない。
こんなときこそ、慎重にゆっくりと計画を立てる。プログラミングに集中するべきポイントをじっくりと絞り込む。無駄なプログラミングを極力排する。無駄のないテスト方法を考える。ゆっくりと、急ぐ。
ムダのない動きは、速く見えない。
オリンピックの競泳の選手は、僕にはゆっくりと泳いでいるように見える。大きなストライドでゆっくりと。でも、それが一番速いのだろう。慌てたら、多分負けだ。
エリック・クラプトンは、あまりに無駄のない運指からスローハンドというニックネームがあると聞く。速いのに、速く見えないのだ。
エンデ作「モモ」という童話がある。確かカシオペアというカメが導く道で、ゆっくり歩くほうが速く進む、というシーンがあったように思う。僕もカシオペアのように、ゆっくりゆっくりと、素早くプロジェクトを進めたい。そうすれば、きっと「締め切り」という怪物に追いつかれることなくゴールに到達できるはずだ。
もちろん、そもそもこの逼迫した状況を生んでしまった計画の甘さ、見積もりの甘さには反省点が多い。だが、今は目前の作業に集中することにしよう。