測定点群とSLIM曲面と次世代CAD

今後のCADを考える上で、測定点群は外せない。と僕は思う。
http://www.quatouch.com/lab/slim_points.pnghttp://www.quatouch.com/lab/slim_srf.pnghttp://www.quatouch.com/lab/slim_balls.png

レーザーなどによる3次元測定器を利用すると、上図左のような測定点群が得られる。これはちょっとしたした革命と言っていいと思う。実際、最近の測定点群の利用拡大は目を見張るものがある。
上図中は、測定点群を元に生成した曲面なんだけど、ちょっと特殊な曲面だ。「SLIM曲面」という表現形式で、点群データから生成するのに非常に適した表現形式だ。3次元CGでは、「曲面」といえども普通はポリゴンで表現するんだけど、SLIM曲面は普通じゃない。
上図右を見て欲しい。ちょっとキモいんだけど、ウサギの表面が球体で被覆されている様子がわかるでしょ?それら各球体の中に曲面が格納されていて、それらをつなぎ合わせて一枚の曲面を表現しているのだ。

SLIM とは Sparse Low-degree IMplicit の略称です。

物体の表面を球体で被覆し、各球体に局所的に定義された陰関数曲面を繋ぎ合わせて、一つの曲面と認識します。

株式会社カタッチ / 研究室 / SLIM 曲面


測定点群はCADをどう変えるんだろう?
僕にはまだハッキリとした答えは分からない。でもCADに「次世代」があるとするならば、そこには何らかの形で測定点群が絡むことは間違いないと思う。そして、上記のSLIM曲面は、CADの次世代を生み出す可能性を秘めているんじゃないか。そんな、漠然とした予感を持っている。
SLIM曲面はまだ研究段階だ。まだ僕みたいな一部のアーリーアダプターが面白がっている段階に過ぎない。SLIMはキャズムを超えるだろうか?もちろん分からない。でも積極的に「キャズム越え」の手伝いはしていきたい。


測定点群の何が「革命」なのか。以前は
VIRTUAL → REAL
という方向しかなかった。つまり、CADというバーチャルな世界で設計したデータを、CAMを通して加工し、リアルな製品を生み出す、という一方向だった。
しかし、測定点群は逆の方向を生み出した。つまり、
REAL → VIRTUAL
という方向だ。リアルな物体をバーチャルな世界に取り込むことを可能にしたのだ。これにより、VIRTUAL と REAL は双方向に接続されることになった。
VIRTUAL ⇔ REAL
これは革命といっても過言じゃない、と思うんだけど、どうだろう?
例えば、なかなかCADでは設計しにくい形状も、職人によって作られた造形物を測定することでCADに取り込むことが出来る。
例えば、人体や自然の造形物の形状も、CADデータに取り込んで人工物に反映させることが出来る。


しかし、残念ながら、話はそう単純じゃない。
問題は、「ソフトウェアはソフト(柔軟)じゃない」ってことだ。
今の3次元CADは、測定点群が登場する前から作られている。つまり、測定点群のことは全く考慮されないでここまで進化を遂げてしまった。だから、測定点群からCADデータにリバースするのは非常に難しい。測定点群とCADの間には大きな断絶があるんだ。
CAD ←×→ 測定点群
この断絶を埋めるために、下記のようなソフトが開発されている。こういったソフトは今後ますます重要になっていくんじゃないだろうか。
株式会社アルモニコス
# あ、また宣伝しちゃった(笑


でも、僕は敢えて、こう問いかけたい。
「仮に、今まで3次元CADというものが存在しなかったとして、まったくゼロの状態から、測定点群ありきで3次元CADを構想したとしたら、それはどんなCADになるだろうか」
この問いの答えを模索することが、次世代CADを考えるヒントにならないだろうか?
もちろん、事実として3次元CADは存在するわけだし、現存する3次元CADが完全に「次世代CAD」に置き換わるという状況は考えにくい。仮に何らかの形で次世代CADというものが登場するとしても、それは現行のCADと共存する形で使われるのではないかと思う。
それを踏まえても、上記の問いかけは面白いのではないか、と思うのだ。そして、SLIM曲面という全く新しい曲面表現の方式が、上記の問いかけに何らかの形で絡むんじゃないか、と妄想している。


# ビビッときたそこのアナタ!ぜひ弊社までご連絡を!(笑