3次元CADデータ構造の変革

日経ものづくりのネットの記事に弊社カタッチがちょっとだけ紹介されていた。会社の人から連絡されて初めて知ったよ。

先日お訪ねした形状処理技術開発のカタッチ(本社東京,アルモニコスの関連会社)では,点群データやポリゴンベースの編集ツール(ツールキット)を開発していました。これは,ソリッドモデルのトポロジ情報も使っていないことになります。

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL/20070511/132403/

四月に木崎さん(この記事を執筆した方)が弊社にいらっしゃって、そのとき私がベラベラと喋った事の一部が記事となったようだ。ちょっと嬉しい。
この記事の主旨を簡単に要約すると、

  • 現状の三次元CADのデータ構造はあまりに複雑である
  • 複雑さゆえにデータの可搬性、柔軟性に欠ける
  • 昨今の動向を鑑みると、CADのデータ構造はより単純化することで流通範囲を広げる方向に進化するのではないか

といった感じだろうか。うん、全く持って同意。というか、そういう方向に変革せねばっ。

3次元CADのデータ構造は,かなり複雑といって差し支えないと思います。まず基本となるソリッドモデルデータは,面や稜線といった形状自体の情報に加えて,どの面とどの面が隣り合うかといったつながりの情報(トポロジ情報)も持ちます。さらに,部分形状の切り分け情報(フィーチャ)と,それをどのように組み合わせてモデリングしたかの情報(モデリング履歴)も加わります。これだけ複雑なことが,異なったCAD同士でデータ交換が難しい理由でもあります。

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL/20070511/132403/

この「データ交換が難しい」ということが現状のCADの「急所」なのだ。なぜ難しいか、を書き出すと長くなるのでここでは割愛。とにかく次のようなデータ交換のためのソフトウェアが必要になるくらい、データ交換は厄介なのだ。
株式会社アルモニコス
・・・あれ?思わず宣伝してしまったぜ(笑

さて、データ交換が難しいということは何を意味するのか。それはCADやその周辺のソフトウェアが「モジュール化」されていない、ということだ。モジュール化とはどういうことか。それは「インターフェイスの規格がきっちり決まっていれば、A社とB社のモジュールを組み合わせて統合したシステムが構築できる」ということ。それがCADでは出来ていないのだ。本当は「意匠設計にA社のCADを使って、構造設計にはB社のCADを使って、C社のDMUで組み立てをシミュレーションして・・・」と自在にCADを組み合わせて設計プロセスを組み立てたいのだが、そこには必ず「データ交換」という壁が立ちはだかるのである。
モジュール化されていない業界では何が起こるか。それは一部の強大なベンダーによる囲い込みである。事実、3次元CAD界の巨人であるDassault社は、買収に次ぐ買収で膨れ上がる一方という印象がある。複数社のCAD間でのデータ交換が難しい以上、ならば一社のCADに統一してしまおう、というのは自然な流れだ。
しかし、僕は連想する。Dassault社の他を寄せ付けぬ強大ぶりは、まるでメインフレーム全盛時代のIBMのようではないか。そのゆるぎない地位を築いていたIBMの足元をすくったのは、PC/AT互換機による「モジュール化」だった。ならば、CAD界に変革をもたらすのもモジュール化かもしれないぞ。
そのモジュール化に必要なことが、「CADデータの単純化」だと思っている。単純化することでデータ交換を容易にし、それによって複数社のCADを自在に組み合わせた設計プロセスの組み立てが実現するわけだ。
話は飛ぶが、TCP/IPのような通信プロトコルのレイヤー構造をご存知だろうか。アプリケーション層から物理層に向かってプロトコルは単純化していき、シンプルなパケット情報となって相手に届く。受け取り手はそのパケットからアプリケーション層のデータを復元していく。このレイヤー構成がインターネットのモジュール化に寄与していると思う。しかしCADは違う。レイヤーを分けずにアプリケーション層だけでデータ交換、という感じだ。
CADのデータ交換にもTCP/IPのようなレイヤー分けが必要なのではないか。そして、IPに相当する最も単純な形状データは、ポリゴンや点群なのではないか。
こういったビジョンを中心に据えて、カタッチの技術を伸ばしていきたいと思う。