「見える化」と Visualization

見える化」とはトヨタ生産方式の言葉で、ソフトウェア開発の世界でも注目されている。一方、物理シミュレーションなどをCGで可視化する「Visualization」という分野がある。どちらも「見えないものを見えるようにする」点では同じなのだが、適用分野も文脈も違いすぎて今まで両者の接点を感じることはなかった。しかし、この両者には根底に共通の精神が流れているのだ、と気づかされる講演に出会った。
それは、昨日・今日と連続して東工大で開催された「Visual Computing の基礎と先端技術」というセミナーである。東北大学の藤代先生が行った「ビジュアリゼーション」と題する講演の中で、次のような Visualization の定義を紹介されたのだ。

定義: Helping people explore or explain data through software systems that provide static or interactive visual representations.
機能: Bootstrapping human spatial inferences and decisions metaphorically.
使命: Detecting patterns, assessing situations, and prioritizing tasks.

これはIEEEのレポート(http://tab.computer.org/vgtc/vrc/index.html)に書かれている内容のようだ。ちょっと訳してみると、こんな感じだろうか。

定義: 静的、あるいはインタラクティブな視覚表現を与えるソフトウェアシステムを通じて、ヒトがデータを探索したり説明したりする手助けをすること。
機能: メタファとしてヒトの空間的な推理力や判断力をブートストラップする(喚起する?増幅する?)。
使命: パターンを検知すること、状況を評価すること、タスクに優先順位をつけること

単にデータを explain するためではなく、explore するためと言っている所が素晴らしい。そして、添えられていた図が秀逸だった。

この図には2つのフィードバックループが描かれている。一つ目は Visualization と User の間のフィードバックループだ。これは Visualization を形式知、User を暗黙知と捉えても良いのではないだろうか。
2つ目は Perception&Cognition と Knowledge の間のフィードバックループ。知覚し知識を得て、その知識を元に新たな知覚が得られ、、、というループとなっている。この辺りのフィードバックループを指して "Bootstrapping" と表現しているのかな。
この図は「見える化」の説明資料として見せられても普通に納得してしまう気がしたのだけれど、どうでしょう?